VFX映像制作プロジェクト「Turn Green」 第3回 シーンセットアップ編

VFX映像制作プロジェクト「Turn Green」 第3回 シーンセットアップ編

こんにちは、映像ディレクター/VFXアーティストの涌井嶺です。
VFX映像制作プロジェクト「Turn Green」 第2回 撮影日編の続き、今日からは編集編です!

今回はシーンセットアップ編ということで、背景等を作る前の準備の作業です。ここの作業を丁寧に行うことで、実写素材の背景を自由に作り進めることができるようになります。

前回撮影した素材はこちら

撮影したときに壁に貼ったマーカーとカメラの位置関係を3D空間上で再現して、実写と3Dソフトでのカメラの動きを合わせる「マッチムーブ」と呼ばれる工程で3D空間上に再現します。

マッチムーブをすることでカメラの動きが再現されるので、3D空間を撮影時と同じように「撮る」ことができ、実写とCGの画面上での動きが一致します。

グリーンバックに貼ったマーカーをソフト上で選択し、トラッキングしていきます。

1分近い長回しで、アングルも大きく変わるので、途中で見えなくなってまた見えるようになるマーカーや、画面上での大きさが変化するマーカーがあり、トラッキングの難易度は高いです……

ちなみにトラッキングしやすい映像の条件には以下のようなものがあります↓

  • モーションブラー(映像のブレ)が少ない
  • 被写界深度が深い(背景ボケが少ない)
  • トラックマーカーの配置が三次元的になっている
  • レンズディストーション(レンズによる歪み)が少ない

トラッキング用の素材を撮影する場合は、こういうところに気を付けましょう!

さて、本当はこんなに全部のマーカーをトラッキングする必要もないのですが、今回は自主制作ということで時間もあるので、精度を上げるためになるべく全部をトラッキングしました。

トラッキングが終わったらソフトにカメラモーションを計算させます。一発でうまくいくことはなかなかないので、エラーが小さくなるまで何度か調整しています。

「Video Tools: Refine tracking solution」というアドオンがとても便利で(デフォルトでインストールされてます)、マーカーごとのエラーから信頼度みたいなものを決めて、全体のエラーが狙った値以下になるように調整してくれます。ガタガタのトラッキングもスムーズにしてくれるので、かなり重宝しています。

マッチムーブが終わると、マーカーの位置が3dシーン上に再現されたことが分かります。

3D空間に再配置されたトラックマーカーの位置をもとに、壁と床を作りました。これらはマッチムーブのチェック用に置いているだけで、後々背景の世界を作るときに取り去ります(左上のビューポート上で十字にたくさん映っているのがマーカーの位置です)。

ここに、グリーンを消してキャストだけ抜いた素材を読み込みます。キャストの素材はAfter Effectsでラフにキーイングし、アルファ付きのデータとしてBlenderに読み込んでいます。

キャストの素材はカメラの子に設定し、常にカメラの画角にピッタリ映るようにしています。また、サイズとカメラからの距離を調整して人物の大きさをノーマライズしたり、接地面の位置を合わせたりしています。

これらの作業が終わった状態が、以下の映像になります!

浮かんでいる球体は、マッチムーブの精度を見るためのものです。マッチムーブの精度が低い、あるいはスムージングをかけていないと、この球体がガクッと動いたり、プルプル震えたりして見えます。

今もちょっと気になるところはあるのですが、一旦許容してます。

ここまで終われば、次はいよいよ背景を作っていく工程です!

最近ようやく自主制作の時間をとれるようになってきたので、どんどん進めていければと思います!

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